MIXIによるオーストラリア大型買収の狙いとM&Aで振り返るスポーツ事業の歴史
25年2月26日MIXIがオーストラリアのスポーツ賭博事業者PointsBet(以下PB社)を約352億円で買収すると発表しました。
これは国内IT事業者によるM&Aとしては、楽天によるViber買収(約920億円)やDeNAによるngmoco買収(約265億円)以来の、国内インターネット業界史に刻まれる大型買収です。
MIXIは2019年以降、複数件のスポーツ領域におけるM&Aや新規事業立ち上げを行い、ゲームに次ぐ“第二の柱”としてのスポーツ事業の育成を進めています。
同社のスポーツセグメントは売上高329億円、全社の売上に占める比率は22.4%という巨大事業になっており、今回はそれを非連続的に拡大する攻めの一手であるといえます。
本稿では、MIXIのこれまでのスポーツ領域におけるM&Aを振り返りつつ、オーストラリアにおけるスポーツベッティング市場の現状と競争環境、そして今回の大型買収の狙いについて考察していきます。
モンストに次ぐ第二の柱をM&Aで立ち上げ
MIXIの2024年度の通期売上高は1,468億円、営業利益率では13.1%となっていますが、売上高はほぼ横ばいとなっています。
会社の売上と利益の大半を稼ぐのは未だにモンストを中心としたゲーム事業ですが、2019年時点ではほぼゼロに近かったスポーツ事業が5年で一気に立ち上がってきています。
このスポーツ事業の立ち上げにはM&Aが非常に大きな役割を果たしており、ゲーム事業から創出される豊富なキャッシュフローがその原資になっています。

PointsBet Holdings Limited の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
ゲーム事業は当たれば大きい一方で、狙って当てるのが難しくボラティリティが高い特性をもちます。そのためMIXIに限らず、ガンホー、DeNA、グリーなど国内の主要ゲーム事業者各社は「ヒット作が倒れる前に安定収益を得られる次の柱を育てる」という基本戦略をとっています。
グリーでは次の柱としてメタバース事業を立ち上げ収益化に成功、DeNAはMIXIと同様にスポーツ(横浜DeNAベイスターズ)やヘルスケア領域にもM&Aを駆使して進出し、特に後者は名実ともに会社の柱になっています。そして直近では再びゲーム事業でポケポケが大当たりしホームラン案件となりました。
一方のガンホーはパズドラに続く次のヒット作を狙い海外投資を継続しているものの次の柱に育てるまでには至っておらず、直近はアクティビストファンドによる株式取得が報じられるなど、転換を迫られる局面が続いています。
M&Aで振り返るスポーツ事業の変遷
続いてMIXIのスポーツ事業について掘り下げていきます。
2024年3月期のスポーツ事業売上高は前年同期比+14.9%の329億円となっており、ベッティング領域と観戦領域の二つのセグメントから構成されます。
その8割程度を主力のベッティングが占め、EBITDAベースでは数億円の利益がでており営利ベースの黒字化も近いと見られます。
主力のベッティング事業の立ち上げは、2019年2月にオンライン競輪車券販売の『チャリ・ロト』を50億円で買収してスタート。
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績


