業界トップの営業利益率40%を実現する『ABホテル』の超ローコスト経営
壮大なビジョンを掲げるスタートアップが高いバリュエーションで数百億円の資金を調達する一方、地方の優良企業の中には素晴らしい事業とは裏腹に注目度が低く割安に放置されている銘柄が少なくありません。
愛知が本社の『ABホテル』もその一社で、一泊平均¥7,000以下と有名なドーミインの半額以下でありながら、営業利益率は業界トップの37.1%とその他の純粋なホテル会社の3倍以上の隔絶した高さになっています。

四季報オンラインより
しかしPER8.0x、EV/EBITDA4.9x、PBR1.5xとマルチプルは割安に放置されており、PERは直近1年間一貫して10x以下となっています。
本日はABホテルの高い稼働率とスリムなコスト構造で、高い収益性を実現するビジネスモデルについて考察していきます。
コロナ禍でも黒字を死守。スポーツクラブの一部門から始まったホテル会社
ABホテルは愛知県を中心にビジネスホテル『ABホテル』を展開。東和建設という建設会社がその源流であり、ゴルフ事業やスポーツクラブ事業が立ち上がる中、1999年にホテル事業を開始。
2014年に分社化されると3年後の2017年は上場。現在もスピンアウトもとの東祥(旧:東和建設)が52.7%を握る大株主となっており、親会社の利益の殆どを稼ぎ出す歪な資本構造になっています。
一般的にホテルには複数の業態があり、星野リゾートに代表されるリゾートホテル、三井ガーデンホテルなどのシティホテル、そこよりも少し価格帯が低くビジネスユースがメインのシティホテルなどが存在。
その中でABホテルはビジネスホテルを展開しており、比較的低単価でありながらシティホテル並みの宿泊体験を提供していること特徴となっています。

中期経営計画〈2025年3月期~2027年3月期 〉
最新のFY25の通期売上高はYoY+7.3%の106.7億円、営業利益率は37.1%と前述のように利益率が非常に高いことが特徴的です。
さらにFY24の稼働率は91.2%と非常に高い一方で、FY24のADR(客室平均単価)は¥6,800と、ビジネスホテルの有名チェーンドーミインの¥15,800(FY25実績)の43%程度と、価格帯としてはリーズナブルな部類に入ります。
しかし、このような低い単価でありながら利益率は業界トップで、コロナ禍の最も利益率が落ち込んだタイミングでも黒字を死守していることは驚きの一言に尽きます。

中期経営計画〈2025年3月期~2027年3月期 〉
ホテルの売上は、客室数、稼働率、単価の3つのKPIからなります。
同社は低単価・高稼働率モデルですが稼働率の91.2%という水準は、コロナ前の19年ビジネスホテルの業界平均稼働率62.7%、23年の57.4%と比較しても高水準であり、何かしらの仕組みで高い満足度・リピート率が実現されていることが示唆されます。
また、以下は自分が大好きなNewspicksさんの『デューデリだん』のアパホテル回で解説されていたホテルビジネスのコスト構造です。
①人件費、②清掃費やレストランの原価である変動費、③地代家賃の3つがコストとして重く、業界の平均的な営業利益率は10%程度となっており、比較的利益率の高いドーミインやアパで20%~25%となってます。

Youtube 「父は小学生の私に不動産ビジネスを叩き込んだ」アパ2代目CEOが「脱カリスマ」「高収益の秘密」「両親への思い」を全告白(元谷一志/アパホテル/元谷外志雄氏/元谷芙美子/ビジネスホテル)
改めてみても、ABホテルの営業利益率37%は驚異的な水準であり、何かしらの仕組みでいずれかのコストを大きく削減していることが示唆されます。
このような同社の脅威的な営業利益率を支える高稼働率・ローコスト経営は、どのようにして実現されているのでしょうか?
高利益率を実現する割り切りの経営
この記事は無料で続きを読めます
- コスト比率30%のCapexを抑える綿密な出店・設計
- 委託方式と業務の簡素化によるオペレーションコストの削減
すでに登録された方はこちら
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績


