ARR100億円超/成長率43%のWealthNavi。SBI提携解消による影響と新事業への120億円投資
WealthNaviというAIを活用した資産運用スタートアップをご存知でしょうか?ロボアドというカテゴリに属する企業で、同社はその国内最大手です。
ARRは100億円を超えて尚年率+43%で成長し直近遂に黒字化も達成。SaaS企業であれば超優良企業といって差し支えないKPIの水準となっています。
創業直後に提携したSBI経由の顧客獲得比率が高い時では50%を超え、大きく成長してきた同社ですが直近提携を解消。
ロボアド競争が進む米国市場の競争環境にも触れつつ、同社のビジネスモデルや今後の成長ドライバー、120億超の投資を発表した新規事業について、考察していきます。
ストック性の高いAUM拡大が事業の成長レバー
まずは事業概要についてです。同社の提供するロボアドは資産運用を人工知能が代替するサービスで、5つの質問に答えると、個々人のリスク許容度に合った運用プランでAIが資産運用を行ってくれます。
この事業のターゲットは、資産運用は行いたいがそこに時間をかけたくない方であると考えられ、位置付けとしては業務効率化ツールに近いものと考えます。
ユーザーが資金運用を従来の金融機関に一任する、『ファンドラップ』と同カテゴリのサービスですが、AIがそれを代替することで手数料率は3分の1程度の水準になっています。
このビジネスはAUM(預かり資産)*手数料率というシンプルなモデルで、後者は既に1%とある程度高い水準であるため、積立と運用による既存顧客AUMの拡大+顧客獲得による新規顧客AUMの拡大が、主な成長レバーであると考えられます。
24年1Qの預かり資産は1.4兆円、運用者数は39.8万人、ARRは104億円。ユーザー当たりの平均預け資産は287万円、ARPUに相当するユーザー当たりARRは約2.9万円となっています。
ビジネスモデルの特徴は既存顧客のストック性の高さです。積立運用による新規資金の流入と、運用によるリターンで継続的に預かり資産が拡大。リーマンショックのような、リスク性のアセットクラスの大暴落が起きるタイミングでも、金や債券等にリバランスされるため、解約が起こりづらくなっています。
実際に解約率は24年3月現在1%以下、NAR(新規運用者の預かり資産が年何%の速度で増加したかを表すSaaS企業のNRRに相当)は22年4Q時点では120%超となっており、順調に預かり資産が積み上がっていることが分かります。
同社2024年12月期第1四半期決算説明資料
競合に目を向けても、預かり資産、運用者数で同社が大きく引き離しており、22年12月〜23年12月の国内預かり資産増加額4,304億円億円のうち、61%のシェアを同社が抑え、圧倒的なNo.1のサービスとなっています。
ロボアド以外も含む投資一任契約市場でも、預かり資産17兆円におけるシェアは6.7%、預かり資産額は業界五位、運用者数では圧倒的一位となっています。
2015年創業のスタートアップが、金融という信用が重視される領域で、10年弱で強力な顧客基盤を保有する従来の金融機関と伍する規模になっていると考えると、その途轍もなさが分かります。
続いてこのような事業グロースを実現できた、AUM拡大とSBIとの提携解消による影響を考察していきます。
同社2024年12月期第1四半期決算説明資料
AUM拡大の50%を占めたSBI提携解消による影響は?
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