ストックビジネス×ロールアップの30年連続増収企業。エレベーターメンテのJES

一見地味なBtoB産業で創業来連続増益を続けるJESの競争優位性
もやし 2025.07.26
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ストックビジネスは単発ではそれほど大きくない売上を中長期で積み上げる性質の事業であるため、売上の伸びが緩やかで損益分岐点を越えるために長い時間を要します。

しかし、一度顧客基盤が積み上がると売上が安定しマージンの改善が継続的に起こるなど、驚くような爆発力を発揮します。

JESはエレベーターメンテナンスという一見地味なBtoBの業態で創業来連続の増収を続け、17年の上場時に53億円だった時価総額は現在3,600億円を超え、恐るべき株価成長を実現しています。

東京証券取引所 上場部『グロース市場における今後の対応』より

東京証券取引所 上場部『グロース市場における今後の対応』より

本日は、実は非常にエレベーターメンテナンス市場と、その市場をシンプルかつ極めて明快なモデルで開拓するJESの競争戦略、売上成長を加速させるM&Aのプレイブックについて考察していきます。

安定的な利益確保が見込める巨大市場

エレベーターメンテナンスとは、エレベーターやエスカレーター等の昇降機の点検や部品の取り替え修理等を行うビジネスです。

市場には昇降機の製造機能を持つメーカー系のメンテナンス会社と、メンテナンス専業の独立系が存在しており、JESは独立系でトップシェアを持つ企業です。

売上は創業来連続の増収を続け直近25年度の売上高は493億円、20年に12.74%だった営業利益率は25年に17.47%と毎年1%ptの改善を継続的に続けています。

創業者の石田 克史氏は独立系のエレベーターメンテナンス会社を経たのち、機械式立体駐車装置のメンテ会社の立ち上げに参画した後、同社を1994年に創業。

エンジニアでありながらメンテナンスの合間の飛び込み営業で一件一件の売上を積み上げ、30年かけて数千億の企業を作り上げた不屈の経営者です。

JES 2025年3月期 決算説明会資料

JES 2025年3月期 決算説明会資料

エレベーターメンテナンスの市場は一見すると地味ですが、国内に存在する110万台の昇降機には年一回の法定検査が義務付けられていることに加え、月一回の定期点検も推奨されています。

これにより1台あたり年間100万円/月間8万円強のコストが発生している1兆円の巨大市場です。さらに、年間新規の設立により年間2%~3%市場が伸びているほか、過去に建設された昇降機の単発1000万円のリニューアルという、新規の需要も生まれています。

そして、エレベーターは止まると致命的なインフラかつ事故は人命の喪失に繋がる領域のため、スイッチングコストが高く一度獲得した顧客は積み上がっていきます。

加えて、実務経験が求められる昇降機等検査員の資格取得がハードルになるため参入障壁も高く、安定的に受注が見込め一定利幅も確保しやすい、一度足場を築けば旨みの大きい市場と言えます。

市場は三菱、日立、東芝、フジテック、グローバル大手のオーチスの5大メーカー系が78%を抑え、独立系は22%。この独立系のシェア22%うち10%という大半をJESが抑えつつ毎年1%程度市場シェアを伸ばしています。

一体何が同社の競争力の源泉となっているのでしょうか?

JES 2025年3月期 決算説明会資料

JES 2025年3月期 決算説明会資料

メーカー系と独立系の競争環境

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