資本主義をハックする異形の投資ファンド『ミダス・キャピタル』とは何者か

エアトリ創業者 吉村氏が構想する現代の財閥
スズキ 2026.07.13
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グロース市場に大逆風が吹き荒れる中、時価総額2,000億円級にまで駆け上がった数少ない新興企業として『バイセルテクノロジーズ』『GENDA』が存在します。

両者に共通しているのは、連続的なM&Aが成長ドライバーになっていること、そして筆頭株主がいずれも『ミダス・キャピタル』というファンドであることです。

同ファンドは、既存企業をまるごと買い取るバイアウト投資を行うだけでなく、ゼロから会社を設立して経営者を招聘するスキームで数千億円企業を排出。更にストラクチャーも特殊で、LP出資者は投資先経営者を含む同ファンドのメンバーのみで、償還期限が存在せず投資先経営者同士が相互扶助を行います。

経営者同士の相互扶助で半永久的にグロースし続ける投資先を上場後も半永久的に保有し続けることで、ファンドの投資先全体の企業価値が膨らみ続けています。

本日はユニークなアプローチで投資先企業のグロースを次々に実現し、複数の数千億円企業を輩出してきた謎のファンド『ミダス・キャピタル』について、代表・吉村英毅氏の構想、投資先の事例、そして同ファンドの群戦略を支えるファンドストラクチャーを整理していきます。

ビジョン共感型の企業群『ミダス・キャピタル』

ミダス・キャピタルは2017年9月、エアトリ(旧エボラブルアジア)創業者の吉村英毅氏が設立した独立系の投資会社です。

社名の由来は、ギリシャ神話に登場する触れるものすべてを黄金に変える力を得た「ミダス王(King Midas)」の寓話です。

創業者の吉村氏は東京大学経済学部在学中の2003年に起業し、2007年にエアトリの前身企業を共同創業。2016年に東証マザーズ、2017年に東証一部へと上場させた連続起業家です(2022年12月にエアトリ取締役を退任)。

ミダスは「世界に冠たる企業群を創る」というビジョンを掲げ投資先の企業群全体の時価総額の合計を、2027年までに1兆円、2035年までに10兆円、2050年までに100兆円へ引き上げるという目標を掲げています。

単一の上場企業では物理的に到達不可能な規模でも、傑出した人材が集まる「企業群」としてなら辿り着けるのではないか——というのがこの戦略の仮説です。

後述のバイセルへの投資時に約50億円だった企業群の合計時価総額は、2026年7月時点で投資先20社・合計約5,000億円にまで拡大しています。

ミダスキャピタル HP CONCEPT

ミダスキャピタル HP CONCEPT

ただし、吉村氏にとって同ファンドの活動は経済的リターンの追求に留まらず、数字の達成以上に「その過程をみんなで楽しむこと」「新しい景色を見続けていくこと」こそを最大の報酬として捉えていると、複数のインタビューで語っています。

そして事業で得た収益の一部は「ミダス財団」を通じて社会に還元され、企業群の成長と同じ時間軸で、社会課題の解決が進む構造です。これは「世界一のお金持ちになって、経済的なことで解決できる社会問題は全部解決したい」という、吉村氏が中学生の頃から抱いてきた夢を体現したビジョンでもあります。

このようなビジョンを掲げるミダスのコンセプトの原点は、吉村氏がエアトリの経営を行う中で、時価総額数十兆円・数百兆円の企業を作り出すためには、傑出した人材を集めること、中長期目線で投資を行うこと、マックスベットを繰り返すこと、の3点が重要という仮説に行き着いたことです。

これは、上場しており短期のPLに縛られるエアトリという単一の発行体でも、複数の企業体に投資は可能なものの償還期限のあるPEファンドのいずれでも、非常に実現するのが難しいアプローチです。

この制約を外し3点を実現するのがミダスのコンセプトです。まずLPをメンバーの自己資本に閉じることでファンドの償還期限を無くし半永久的な保有を可能にします。

そして傑出した人材は群戦略のビジョンやファンドの経済的なリターン、各投資先の報酬設計で集め、利益とビジョンで繋がった「ミダス企業群」での相互扶助を可能にしています。

これによりピュアな金融投資家であるPEでも単一の発行体でも不可能な企業群としての成長を永久保有で享受しつつ、実現したファンドのリターンで次のミダス群企業を作り続け、マックスベットを行うのが同ファンドの戦略と言えます。

吉村氏はこれを「ビジョン共感型の新しい形の企業群」と表現しています。

その姿は、優良企業を買って持ち続けるウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイ、群れとして企業を束ねるソフトバンクグループ(SBG)、そして多様な事業を抱える日本の総合商社を想起させます。(特にソフトバンクのビジョンファンドにとても近い)

ただし決定的に違うのは、ミダス本体はあくまで非上場を貫くことで「コングロマリット・ディスカウント」から解放されている点です。

総合商社やSBGのような巨大持株会社は、傘下事業を束ねるがゆえに、市場から実態より低く評価される(=ディスカウントされる)という宿命を抱えます。ミダスは本体を上場させず、過半を持つ各社を一社ずつ個別に上場させる構造をとるため、このディスカウントから解放されています。

このように極めてユニークなビジョンを掲げる同社ですが、具体的にはどのようなGENDAやバイセルへの投資で秀でたリターンを実現してきたのでしょうか?複数の投資事例をもとに見ていきます。

数千億円企業を作り出した黄金のトラックレコード

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続きは、4553文字あります。
  • 群戦略を実現するミダスのファンドのストラクチャー

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