アクティビスト対策で独占的シェア。人月ビジネスで粗利率80%超えの『IRジャパン』
売上収益から生産原価を引いた粗利率は、事業モデルによって概ね規定され、企業の努力によって改善できる幅はある程度限られます。
再生産コストが非常に低いSaaSでは70%前後と高くなり、原価に稼動人員の給与が乗る人月ビジネスでは概ね〜40%程度となります。(アクシスコンサル、フロンティア・マネジメントなど単価の高い領域に特化した一部の企業で~60%)
そんな中、人月ビジネスで80%という異常値とも言える粗利率を叩き出す企業が、アクティビスト対応で独占的シェアを抑える『IR Japan』です。本日は同社について3つの点を考察し、特定領域のニッチトップ企業の利益率の高さについて考察していきます。
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平時の案件で収益の基盤を作り、有事の大型案件でアップサイドを狙うビジネスモデル
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独占的にシェアを抑えられる構造的な強み
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ダイヤモンドで報じられたインシデントの影響
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信託銀行やFAS、外資の相次ぐ参入
資本市場改革の恩恵を受け営業利益が1年で2.5x
まずは同社の概要から見ていきましょう。
同社は、上場企業に対し株主対応サービスを提供する日本最大のSR/PAアドバイザリーファームです。
政府による資本市場改革を背景としたアクティビストの参入増加により、FY20は売上高はYoY+59.1%の76.8億円、営業利益に至っては同+152.8%の36.2億円と、空前の高成長を遂げてきました。
後述の不祥事前の最盛期は営業利益率は49.2%、粗利率に至っては現在も一貫して80%を維持しており、利益率が非常に高くなっています。
人月ビジネスでの粗利率80%は、コンサルタント等の稼働原価に対してマージンが4倍乗っていることを意味しており、何かしらの要因で価格競争が起きていないことが示唆されます。

IRジャパン アニュアルレポート2021
株主調査でシェア48.7%。無敵の株主調査/PAビジネス
次に提供サービスについて見ていきましょう。
同社は主に平時と有事の二つのフェーズに分けてサービスを提供。
平時のエクイティ・コンサルティングは実質的な株主の調査や企業価値向上に向けたアドバイスを行う予防策的な案件です。多数の顧客に分散したストックビジネスの色合いが強く、一件あたりの単価は数百万円〜となっています。
有事の案件はアクティビスト投資家による大量保有報告書や株主提案等が提出され、経営支配権リスクが顕在化したタイミングのサービスで、買収防衛策の導入や委任状争奪戦対応等のPA(Proxy Advisory)サービスを提供。
有事の案件は数が少なくスポット性の強い収益ですが、取締役の解任提案が絡むケースも多く、経営陣にとっては基本負けられない戦いとなるため、一件あたりの平均単価は数千万円〜に跳ね上がります。(24年のIRジャパン実績では5,000万円以上の大型案件が16本存在しており平均単価は1.2億円)
そのため、平時のストック収益で安定的に稼ぎつつ顧客とリレーションを作り、株主提案が出たタイミングでのスポットの大型案件を稼いでいくことが、同社の基本戦略と言えます。

IRジャパン 2024年3月期 決算説明会資料
このビジネスモデルの起点になっている株主調査の同社のシェアは時価総額1兆円以上の規模では48%~、アクティビスト対応でも業界実績No.1となっており、SR/PAビジネスで非常に高いシェアを抑えていることが分かります。
何が同社の競争優位性になり、このような高いシェアと利益率が許容される強固なビジネスを作り上げられているのでしょうか?

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