XTechによるエキサイト買収・再生の軌跡とオンライン診療軸の成長戦略
先日老舗IT企業エキサイトが、半期で売上9.5億円、営利2.5億円のクリニック経営支援を行う『ワンメディカル』を、38.6億円という高値で買収し業界を騒がせました。
この買収を行なったエキサイト自体も、2018年にはピーク時から売上は半分になり3年連続赤字という状態で、創業1年に満たないXTech社が買収。その後四ヶ月という短期間で黒字化を果たし23年に再上場を果たしています。
本稿ではXTechによるエキサイトの買収〜再生の軌跡を纏めつつ、ワンメディカルを軸に据えた成長戦略について考察していきます。

ONE MEDICAL株式会社の株式取得について
創業0年企業によるエキサイト買収の衝撃
エキサイトは、ブロードバンド事業や、女性向けメディア・占い/カウンセリング等から構成されるプラットフォーム事業を主力とする、インターネット企業です。
直近の通期の売上高は77.1億円、営業利6.4億円なっており、ブロードバンドとプラットフォーム事業で売上の90%と利益を稼ぎ、新規事業であるSaaS/DX事業やオンライン診療事業に投資するような事業ポートフォリオとなっています。

2024年3⽉期 通期決算説明資料
同社の起源は米国にあり、インターネット黎明期に米国で検索エンジン・ポータル事業等を行うUSのExcite Incの日本法人として1997年に設立されます。
伊藤忠から出資を受けつつ米国と同様の事業を日本で展開しますが、1999年にはUS本社自体が買収され2年後に買収した企業が破綻すると、伊藤忠が日本法人の90%を取得し子会社化。
伊藤忠子会社後はポータルサービスの運営に注力しつつブロードバンドも開始するなど、Yahoo!をベンチマークした事業展開を続けますが、スマホシフトに乗り遅れ業績は低迷。
ピークは2008年の売上高132億円ですが、2018年には半分以下となる63億円まで売上が低下し3期連続の赤字に。前述のように2018年に創業された新興企業『XTech』に58億円で買収されます。

エキサイトホールディングス株式会社(E34326)有価証券届出書(新規公開時) 1/175
この買収を主導したXTechの創業者は、2000年にサイバーエージェントに入社し取締役COOや子会社の代表を歴任し、VCのWiLの創業者GPでもあった西條氏で、CFOとしては同じくCAの財務経理のトップであった石井氏が参画しています。
創業0年の企業が業界の大手企業を買収する非常にアグレッシブなディールですが、XTechはみずほからの40億のLBOローンと、ユナイテッド・DG・みずほキャピタル系VCからの18億円の出資で、58億円全額をファイナンスで調達してみせます。

2024年3⽉期 通期決算説明資料
新興企業が業界の大手企業を買うという点でGENDAのSEGA Entertainment買収を彷彿させますが、業界で豊富なネットワークを持つ西條氏・石井氏だからこそ成立させられたディールであると言えます。
また、当時の当時のエキサイトは現預金と投資有価証券で44.2億円というキャッシュリッチな企業で、ネットキャッシュを除く取得価格は僅か10億円前後であったとみられます。
西條氏は、この金額でストック性の高い事業とブランド認知、200名以上の同社の優秀な人材を手に入れられるのは最高の条件であったとインタビューで話されていました。
サイバー元COOによる買収四ヶ月後の黒字化と再上場
買収直前期の同社の業績は売上高63.0億円、営業利益-2.4億円となっており上場時の売上高71.3億円、営業利3.9億円と比較すると、未上場時に売上が+13.1%の14.1億円、利益も+6.3億円と大きく改善していることが分かります。

エキサイトホールディングス株式会社(E34326)有価証券届出書(新規公開時) 1/175
これは買収直後の余剰コストの見直しと人員配置の最適化、その後の既存事業のテコ入れと新規事業の立ち上げが、大きな役割を果たしたと考えられます。それぞれ見ていきます。
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績


