創業来24年連続増収。超高収益ERP SaaS『オロ』の差別化戦略

超優良企業であるオロのビジネスモデルと、SAP・オービックといった競合との差別化戦略について考察
もやし 2024.10.06
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SaaS企業のPlaybookとなっている典型的な成長モデルは、VCから調達した資金をプラットフォーム開発やセールス&マーケに投資し、赤字を許容しつつリカーリング収益を積み上げていくものです。

そんな一般的なSaaSの成長と異なる堅実な経営で、創業以来24年間黒字で増収を続け、36.2%という高い営業利益率を実現しているSaaS企業が『オロ』です。

本日は知る人ぞ知る超優良企業である同社のビジネスモデルや、SAP・オービックといった競合との戦略の違いについて考察していきます。

受託開発からスタートし堅実な経営で複利の成長を実現

オロは1999年に東工大出身の川田氏が大学の同級生2人と共同創業しており、ソフトウェアの受託開発から事業をスタート。

当初は受託開発やWebサイト制作など安定した事業でキャッシュを積み上げつつ、創業7年目となる2006年に現在の主力事業であるERP SaaSの『ZAC』を開発。

着実にストック収益を積み上げ23年度の連結売上収益は70.3億円、営業利益率も現在は36.2%まで伸びています。

その資本政策も非常に特徴的で、VCからの調達や銀行からの借入を行わない、自己資本の無借金経営を行なっており、受託で積み上げたキャッシュの再投資のみで連続的に成長を続けています。

2024 年 12 月期 第2 四半期 決算説明資料

2024 年 12 月期 第2 四半期 決算説明資料

この非常に堅実な経営哲学には、京セラ創業者の稲盛和夫氏の影響が垣間見えます。

オロの川田社長は稲盛和夫氏の私塾『盛和塾』に参加されており、同氏の説く無借金経営を実践しているのは前述の通りです。

さらに、同社のERPの特徴はPJ単位の採算の可視化となっていますが、稲盛氏の『アメーバ経営』というコンセプトを実現するものであり、深い影響を受けていることが感じられます。

Facebookイベントページ 株式会社オロ・川田社長特別講演

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主力事業のERP SaaSは41.5%と超高収益

続いて同社の事業についてみていきます。

同社の事業は前述のERP SaaSの開発・販売を行う『クラウドソリューション(CS)事業』、デジタルマーケティングの支援を行う『マーケティングソリューション(MS)事業』の二つです。

CS事業が従業員数百名規模の中堅企業を対象としているのに対し、MS事業の顧客はイオンリテールや日産自動車のような超エンタープライズとなっており、二つの事業はそれぞれ独立して運営されているようです。

半期の業績はCS事業が売上高23.3億円・営業利益率41.5%に対し、MS事業が売上14.8億円、営業利益率22.7%となっています。

売上規模はCS事業の方が大きい他、利益率で見てもSaaSのストック収益が積み上がっているCS事業の方が高くなっており、主力事業はこのCS事業であると言えるでしょう。

2024 年 12 月期 第2 四半期 決算説明資料

2024 年 12 月期 第2 四半期 決算説明資料

特定業種の中堅企業に特化することでSAPやオービックとの競争を回避

ここからは、本日の主題であるCS事業に絞ってさらに細かく考察していきます。

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