DXコンサル売上47億円/SaaS ARR10億円。クラウドワークスが進める大変革

クラウドワークスCFOに変革の裏側を直撃インタビュー
スズキ 2025.10.18
誰でも

クラウドワークスといえば、同名のクラウドソーシングサービスで有名ですが、同サービスが全社の売上総利益に占める割合は、実は約20%に過ぎません。

現在売上総利益の約70%は、人材マッチングを営業担当が介在して行うエージェント領域が占めており、FY25 3QのYoY成長率も+35.7%と成長ドライバーとなっています。

本日はクラウドワークスの相場CFOに、エージェント領域を短期間に急成長させられた背景、他社に無い競争優位性、DXコンサル事業を中心とした今後の成長戦略・投資方針、についてお聞きしていきます。

〈インタビュイーProfile〉相場トーマス祐介 執行役員 兼 CFO

青山学院大学国際政治経済学部卒業。新卒としてメリルリンチ日本証券(現BofA証券)に入社。グローバルマーケッツ部門エクイティ本部で、国内外の機関投資家向けに日本株の営業業務に約13年従事。その後、みずほ証券金融戦略部で、企業向けにマーケット知見を活用した株式に関するソリューションビジネスの立上げに従事。大企業の株式持合い解消、成長企業のエクイティストーリー作り、IRに関する助言、マーケット目線での資金調達、など幅広いエクイティ業務を経験。

2021年11月、株式会社クラウドワークスに参画 2023年1月、同執行役員に就任

クラウドワークの入社経緯と吉田社長について

ーーー2021年11月にみずほ証券からクラウドワークスへ転職された経緯と、どんな部分に魅力を感じたのかお聞かせください

クラウドワークスと関わり始めたのは2019年頃からで、新株予約権による資金調達をみずほ証券側の担当として支援していました。

当時のクラウドワークスは赤字、現在の主力事業であるエージェント領域も立ち上げ直後で、市場にも会社の魅力を伝えきれていない状態でした。

それからしばらく経ち、2021年初頭にCEOの吉田と近況報告をしていたところ、生産性向上を経て会社が筋肉質になっていたり、エージェント事業が急成長したりと、「別人」のように変わっていました。

加えて、この時期は利上げ前のSaaSバブル全盛期で、海外機関投資家が日本のグロース株に興味を持ち始めた時期でした。リスクマネーを引き入れて大きなチャレンジがしやすく、クラウドワークスはその大きなポテンシャルを秘めた会社であると感じ、参画を決めました。

ーーー吉田社長はどのようなキャラクターの方ですか。

一言で言うと非常にビジョナリーで想いが強い人間です。

学生時代は優等生ではなかったり、役者を目指してたり、大企業に馴染めず起業にも失敗したりと、様々な経験をしてきています。

しかしそうした経験から、クラウドソーシングプラットフォームで多様な人々が活躍できる場所を提供したいという強い信念を持つ、非常に迫力のある起業家/経営者だと思います。

クラウドワークス社の事業ポートフォリオ

ーーー直近のクラウドワークス社の事業ポートフォリオとそれぞれの事業概要を教えてください

事業セグメントは大きく「マッチング」と「SaaS+その他」に分かれており、「マッチング」が売上総利益の約90%を占めます。

マッチングの中にも二つの領域があり、一つは「プラットフォーム領域」で、主にマッチングプラットフォームのクラウドワークスを展開しております。

もう一つは「エージェント領域」で、企業の人材ニーズに対し当社の社員がフリーランスの活用の提案を行ないマッチングを行う、人が介在するビジネスモデルです。

プラットフォーム領域は横ばいとなってますが、エージェント領域は足元粗利の約70%を稼ぎ出してる他、成長率でもFY25 3QではYoY+35.7%と全社の成長ドライバーとなっています。

オーガニック成長だけでなく、M&Aも活用しており、2025年9月期は2社の買収を行っています。

ーーーエージェント領域での競争優位性について詳しく教えてください

強みの一つはプラットフォームで構築した人材のデータベースです。

当社グループには累計700万人以上のユーザーが登録しており、過去の受発注案件を通じて得られた評価データをもとに質の高い人材の提案が可能です。また、広告宣伝費なしで年間80万人以上がプラットフォームに登録してくださるため、ワーカー獲得コストが他社よりも低くなっています。

案件はシステム開発案件やデザイン案件が圧倒的に多く、近年では2020年頃から立ち上げた副業人材を集めるプラットフォームを通じて、元経営者、コンサルタント、証券会社出身者、企画職など多様なスキルを持つ副業人材も増えてきています。

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

また、100万社の顧客基盤と認知度の高さも大きな強みです。プラットフォームを利用する既存顧客の多くは外部人材の活用ニーズが既に顕在化しています。

そういったニーズの存在する顧客に対し、クラウドワークスのブランドでアプローチを行うことで、話を聞いていただくことが多く、一定割合がその後案件化しています。

このようにプラットフォームを基盤とする累計700万人のユーザー、ワーカーの評価データ、累計100万社の登録顧客、認知度の高さが、エージェント事業の大きな強みであると言えます。

ーーー逆に課題はどんなところにあるのでしょうか

 我々は週3日稼働や副業といったフレキシブルな働き方をする人材のマッチングに強みがある一方、常駐派遣のようなフルタイムのニーズの取り込みはまだ限定的です。

この課題に対し、企業の外部人材活用需要を取り込み更に成長角度を高めていくために、常駐エンジニアの提供とDXコンサルへの進出を進めています。

新規投資家向け資料(事業計画及び成長可能性に関する資料)

新規投資家向け資料(事業計画及び成長可能性に関する資料)

DXコンサル強化を中心とした成長戦略

ーーーIRでも突然DXコンサルの強化を打ち出された印象があるのですが、どういう背景からこの戦略転換に至ったのですか

経営陣の中でも、AIの浸透やリモート回帰などの外部環境の変化に対する危機感が共有されていました。

一方機会として、副業人材データベースの拡充により高度なスキルを持つ副業人材を獲得できたことで、クライアントのフリーランスニーズだけでなく、より根本的な経営課題に直面する機会が増えました。

この経営課題へのソリューションという形で人材活用の提案を行うことで。クロスセルが進み客単価が飛躍的に伸びるケースが増えてきたため、これをより発展させていく方向に戦略を転換しました。

セールスの難易度が非常に高いため、営業スキルや課題解決事例を共有する社内カンファレンスを実施しているほか、アクセンチュアなどのコンサルティングファーム出身のシニア人材を積極的に採用しています。

ーーーDXコンサルサービスのターゲットはどのような企業になるのでしょうか 

大手コンサルファームとは直接競合しない、売上100億〜500億円規模の中堅企業にフォーカスしています。

専任のコンサルタントとフリーランス人材を組み合わせてコストを下げ、大手ファームが手を出せない領域で、リーズナブルで質の高いサービスを提供していく方針です。この方針を、当社は「コンサルの民主化」と呼んでいます。

また、コンサルタントとエンジニアはセットでサービス提供を行うことを考えており、コンサルタント40名、常駐エンジニア60名の計100名を採用予定です。コンサルタントの採用は好調で、立ち上げ期にも関わらず半年間で既に10名の入社が決定しています。

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

ーーーDXコンサル事業を開拓する上での強みや勝機はどこにあると見ていますか

エージェント領域と同じく、プラットフォームで培った中小企業の強固な顧客基盤と認知度の高さ、そして豊富なフリーランス人材のプールです。

大手ファームに対してはコスト構造で差別化できており、彼らが入れない価格帯でサービスを提供できます。中堅企業向けの市場で競合するイントループやタナベコンサル、船井総研に対しては、デジタル領域中心に実際に手を動かせる人材の豊富さやスキルの幅、要件定義から実装まで一気通貫の開発体制において我々に優位性があると考えています。

ーーーDXコンサル事業の定量的・定性的な手応えはいかがですか

売上は第3四半期累計で47億円に達しており、既にある程度の事業規模を作り上げることができていますが、まだ引き上げる余地があります。

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

来期以降は採用を進めているコンサルタントを核にクロスセルを進め、プロジェクト単価を向上させていくことを目指しています。

今期グループインしたインゲート社/CLOCK・IT社の貢献もあり、すでに平均単価は以前の数十万円から200万円近くまで上がっており、さらなる向上が見込まれます。

ーーーインゲート、CLOCK・ITはどのような会社ですか

二社ともDXコンサルサービスの強化を目的にグループインした会社です。

インゲート社はAWSに強みがあり約150名の正社員のエンジニアを抱えています。大手のナショナルクライアントやSlerにエンジニアの派遣サービスを提供しているほか、コンサルティング会社向けの人材紹介も行っています。主にクライアントが抱えるフルタイムの人材活用ニーズを取り込むことが目的です。

CLOCK・IT社も常駐派遣エンジニア約50名を抱え、フリーランス人材の提供も行っています。クライアントは主にSlerで、二次受け三次受けが基本となっており、クライアントへの直販体制に商流を変えていくことで、利益率の向上が見込めると考えています。

なお、2025年10月にこれら2社を母体に新会社「株式会社クラウドワークス コンサルティング」を発足いたしました。

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

戦略達成に向けた生産性向上とM&A。来期以降の投資方針

ーーー貴社の特徴的な取り組みである生産性向上について詳細を教えてください

この取り組みは、CEOの吉田がある有名企業の社長からKPI管理や生産性管理が全くできていないという厳しい指摘を受け、成長資金を外部からの調達に依存することのリスクを痛感したことをきっかけに、スタートしています。

この取り組みにより、2020年の開始から1年で黒字化を果たし、その後営業利益は4年連続で過去最高を更新しています。

読んで字の如く、全社の生産性改善を継続的に改善していくことが目的で、各チームが、生産性向上の成果を発表し優秀なチームに金一封プレゼントという、「生産性向上ナレッジ共有コンテスト」を毎週実施しているほか、生産性向上のナレッジの言語化を進めています。

各チームが改善策を考えるようになった他、個人の評価シートにも組み込まれていることで、生産性の改善がカルチャーレベルで根付き、継続に繋がっています。

この取り組み開始以降の新卒社員は「生産性向上ネイティブ」と呼ばれているという話なんかもあります。(笑)

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

ーーー言うは易しで徹底する難易度は非常に高そうです。生産性向上への取り組みを長期的に継続できている秘訣は何ですか

もちろん抵抗もあったものの「利益を出せない会社は存続できない」というトップの強い危機意識をもとにトップダウンで推進しました。

当初は社長の吉田自身が一つ一つの稟議をチェックするところから始まったほか、徹底的に重要性を社内に発信し続け、生産性向上を仕組み化していきました。

ーーー生産性改善といえばAIを活用した取り組みも展開されているのでしょうか

同じくAI活用も吉田の号令でトップダウンで推進しています。AX戦略室という全社横串のAI活用の部門を設立しているほか、各部にAIアンバサダーを配置しAI活用を促しています。

AIによる生産性向上の余地は全領域で存在すると考えております。エンジニアのコード生成、人事領域での履歴書作成、営業のロープレ、マーケティングなど、あらゆる業務でAIを活用するという方針です。

社内AIポリシーを策定しGeminiの活用を全社員に推奨しています。AIによる生産性向上施策は、将来的には中小企業向けのコンサルサービスのメニューの一つとしても、展開していきたいと思っています。

ーーー続いてM&Aについてのトラックレコードを教えてください 

M&Aは、生産性向上によって利益が安定的に出るようになった2021年〜2022年頃から加速させています。

2025年10月時点で累計12件の買収を行なっています。

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

ーーーM&Aを成功させるための重要なポイントは何ですか

当社の有する5つのアセットを用いてシナジーを生み出せるか否かを見極めることです。

5つのアセットとは、①クライアント約7万社・ユーザー約60万人が毎年新規登録する人材データベース、②プラットフォームとエージェントモデルを両立させるビジネスモデル、③営業に再現性を持たせる「CWセールスモデル」、④生産性向上文化、⑤経営ノウハウ「CWマネジメントポリシー」です。

これら5つのアセットのうち、どれが役に立つかをデュー・デリジェンスの中で見極め、グループインをする会社と協議を行い、双方の合意がとれて初めてグループインいただく形にしております。

ーーーソーシング、PMIそれぞれどのように行われていますか 

ソーシングは、仲介会社、金融機関の他、自社での直接のアプローチを実施するなど多様な経路で行っており、M&Aにアクティブであるという認知度が高まったことで、多くの案件が持ち込まれる状況です。直近1年間で1,000件以上のリード数を重ねています。

PMIでは、90日間のメニューを5つのアセット、カルチャー、ガバナンスの3つの観点で型化し、グループイン1日目から実行しています。経営者に対して業績面の要求は当然していきますが、過去の反省から自社の文化やポリシーを押し付けるのではなく、面白いと思ってもらえるようにコミュニケーションしています。

会社全体で過去の失敗や、生産性向上のナレッジをドキュメント化しており、これをM&A先の企業に対しても展開しています。

押し付けるのではなく、学びたい企業に利用を促すという形で活用に結びついており、グループ企業の利益率向上に貢献しています。特に生産性向上の部分は非常に効果が出やすいと考えています。

ーーーよろしければ具体的な事例などもお聞きできないでしょうか

デザイナー派遣を行うユウクリという会社が23年10月にグループインしました。この会社には40年の歴史があり、当然その中で作られてきた会社のカルチャーがあります。

グループイン後にクラウドワークスの生産性向上のコンテストを見て、自社でも取り入れたいという話になり、ユウクリのカルチャーを活かしたユウクリらしい生産性向上『セイチャレ』という取り組みを始めました。

『セイチャレ』は、約1年間で一人当たりの残業時間27.2%削減とともに、一人当たり売上総利益43.6%向上を実現し、クラウドワークスグループ内のキックオフでもMVPを受賞しています。

ーーー 19四半期連続で粗利益が前年比20%以上伸びているのは驚異的な数字ですが、その裏側には何がありますか

全社で取り組んできた経営管理体制の強化と、社内メンバー全員が達成にコミットするカルチャーの醸成が大きな要因です。明確な目標を設定し、達成に向けて取り組むことができています。

ーー来期以降の投資と利益成長のイメージについて教えてください

DXコンサル事業を中心とした成長加速に向け、来期は規律は持ちつつも一定の投資を行なっていきたいと考えています。具体的にはコンサルタント・エンジニア採用と、ブランディングのための広告投資です。

この先行投資により来期は一時的に減益となる可能性も視野に入れていますが、再来期以降は顧客単価をしっかりと上げ、より利益率の高い構造に変革していくことを、目指しています。

クラウドワークスが大きく変化し、企業価値を高めるための重要な取り組みだと考えており、投資家の皆様には是非、その勝負を応援してほしいと考えています。

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

2025年9月期第3四半期 決算説明資料

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