ラクス「楽楽メールマーケティング(旧:配配メール)」に学ぶ、競争激化時にも成長し続ける差別化戦略とは

「株式会社ラクス」が提供する「楽楽メールマーケティング(旧:配配メール)」(以下、楽楽メールマーケティング)のプロモーションご担当者さまに、上場後もグロースし続けるメール事業について伺ってきました。
もやし 2025.11.25
誰でも

同業のSaaS企業が資本市場から調達した資金による先行投資で大きな赤字を掘りながら成長しているのに対し、創業以来一貫して黒字を維持とトップの企業でありながら異彩を放っています。

そんなラクスのクラウド事業は実はメール管理サービスの開発からスタートしており、メール関連サービス全体では21年に39.4億円だった売上が25年には67.9億円と、上場SaaS一社程度の巨大な事業となっています。

今回は、メール関連サービスの中でも直近成長著しい「楽楽メールマーケティング」について、市場内での競争激化やMAツールが台頭した際、どのように乗り越えてお客様に価値を届けてきたのか。また10月23日に「配配メール」から「楽楽メールマーケティング」に名称を変更した背景と今後の展望について、インタビューを行っていきます。

ラクスにおけるメール事業の位置付け

ーーーラクスの沿革について簡単に教えてください

創業者の中村はNTTの出身で、一度メーリングリストサービスで起業・楽天に売却を行なったのち、ラクスの前身となるIT Boostを2000年に設立しています。

実はエンジニアスクールから事業をスタートしたのち、創業2年目にはクラウドサービス『楽楽自動応対(旧:メールディーラー) 』(以下、楽楽自動応対)を立ち上げ、2002年にはIT人材サービス事業を開始しました。

その後、2006年以降クラウド事業に主軸を移し2015年に当時の東証マザーズに上場しています。

ーーー会社の中でメール事業はどのような位置付けなのでしょうか

クラウド事業として最初に開発したサービスがメール管理サービスということもあり、ラクスの中では祖業に近い位置付けの事業です。

メールサービス内のセグメントとしては、歴史の長い楽楽自動応対と、楽楽メールマーケティングやブラストメールといったメール配信サービスの二つが存在しています。

この二つの合算売上は、21年に39.4億円だったところから、25年には67.9億円と1.7倍なっており、年間平均10%台後半程度の成長率で現在も売上が伸びています。

2010年代は楽楽自動応対が売上を牽引していましたが、以降はメール配信サービスの売上比率が上昇しており、この背景には楽楽メールマーケティングでの売上伸長が貢献しています。

競争が盛んなマーケットで選ばれるサービスになるために戦略を再設計

ーーーメール配信サービス市場の競争の歴史を簡単に教えてください

市場の転換期は大きく2つあり、1つ目は市場が成熟期に入り、競合も増えサービスのコモディティ化が進んだ時期です。これが2010年代前半ごろの話です。

2つ目は、ほぼ同時期ではありますが、2010年代半ば以降にメール配信ツールの競合としてMAツールが台頭してきた時期になります。

ーーーその中で楽楽メールマーケティングの市場でのポジショニングはどのようなものだったのでしょうか

当初は、一言でいうと「中価格中機能のメール配信システム」というポジションを取っていました。

その中で低価格帯と比較して価格差はさほどないが十分な機能が揃っていて、高単価なサービスに対しては安いが必要な機能は備わっていて使い勝手が良い、という点をセールスポイントにしていました。

しかし、2010年代前半になるとサービスのコモディティ化が進み、価格競争が激化。

その中でも選ばれるための戦略として、他のツールとはわかりやすく異なるサービスとしてのコンセプトやブランドとしての第一想起※獲得が必要だと考えました。

※あるカテゴリで「最初に思い浮かぶブランドは?」と聞いたとき、最初に挙げられたブランドのこと。

そこで当時まだ国内で浸透しきっていなかった「メールマーケティング」を掲げ、メールでしっかり成果を出したいお客様を対象に、メールマーケティングとは何か、成果を出すためのノウハウなどを発信し、市場内での認知拡大に取り組みました。

このように、だれでも簡単にメール配信ができるツールに私たちのノウハウや知見を組み合わせて、当時は“ツール+伴走支援”のメールマーケティングサービスとしての立ち位置を確立していきました。

​​ーーーノウハウの提供やプロダクトの強化について具体的に教えてください

まずは自分たちがサービスを徹底的に使い込んでノウハウを貯めつつ、情報提供の場として立ち上げたオウンドメディア(メルラボ)で公開してきました。

そして、利用中のお客様には、蓄積したノウハウをもとに運用改善の提案やメール添削を実施してまいりました。

これらのノウハウはプロダクト強化にもつながっていて、既存ユーザーの運用改善や提案をしていく中で見えたユーザーの実態や課題を解決するために、開発した独自の機能も多くあります。

例えば、開封されやすい時間と曜日がひと目でわかる「ヒートマップ機能」がその1つです。

ユーザーの多くは、営業活動の傍らメールマーケティングも兼務しています。そのため、成果を高める上で重要な開封率に対して、分析する時間もなく、メールを送るだけになってしまっている方もいらっしゃいました。

そこで、兼務で忙しい方も楽に開封率を高めてメールによる成果を得られるように、過去の配信結果をもとに開封されやすい曜日と時間帯がひと目でわかるヒートマップ機能を開発しました。

楽楽メールマーケティングには、このように顧客の声や抱える課題・ニーズを拾い、実運用に即した独自機能が備わっていることが、他サービスとの機能的な差異になっています。

こうした取り組みの結果、「メールで成果を出したいならとりあえず楽楽メールマーケティングに相談しよう」という認知が獲得できたことで、新規の問い合わせ数の増加に繋がりました。

外部環境や顧客ニーズの変化に順応し、サービスの付加価値を高めながら差別化する

ーーー外部環境の変化やそれに伴い直面した課題についても教えてください

外部環境の変化でいうと、MAツール(マーケティングオートメーションツール)参入はメール配信サービスにとって大きな転換点でした。

MAツールの参入により、単なる一斉配信だけでなく、問い合わせやセミナー申し込みなど、「具体的な成果が欲しい」というニーズが増加したことで、比較検討時にMAツールが競合となることも増え、エンタープライズ中心に既存・新規のお客様の一部がそちらに流れていくこともありました。

ーーーMAツールとの競争ではどんなケースで失注・解約に至ることが多かったのでしょうか

マーケティングに力を入れている中堅企業などでは、「MAツールでスコアリングなどもう少し高度な施策に取り組みたい」という理由で卒業されるケースがありました。

MAツールの魅力は、プラットフォームを跨いで行動情報を元にしたスコアリングができる点だと思います。

例えば、サービスページのどこをいつ見ているか、どれくらいの時間滞在しているか、そしてその後にホワイトペーパーをダウンロードしたりセミナーに申し込んだりといった行動を追うことができます。

こうした行動情報をもとにスコアリングし、確度の高い顧客へ優先的にアプローチすることがMAツールでは可能になります。

この『スコアリング』がMAツールに流れる最も大きな理由だったのですが、同時に『スコアリング』で失敗される方も多かったのです。

ーーーこのMAツールとの競争の際にどのようにラクス様は対応されたのでしょうか

MAツールはかなり細かなスコアリングが自由度高くできるのですが、自由であるが故に何をしたら良いか分からず結局メール配信しか使わなかったという話を伺うこともありました。実際にMAツールに移行したものの、機能過多で運用できずに、楽楽メールマーケティングに戻ってこられる方もいらっしゃいました。

もちろんMAツールを有効活用して成果を出される方もいらっしゃいますが、弊社にお問い合わせいただくお客様の中ではそういったお声も多かったですね。

こうしたお客様の声やニーズをもとに、新たに開発・提供を開始したのが、Web上の行動が検知できる機能や簡易的なスコアリングができる機能などを搭載した『Bridgeプラン』です。

Bridgeプランには、メールの開封やクリックをベースに商談化しやすいお客様を特定・リスト化するホットリード抽出機能や、Webサイトを閲覧した方がいれば、そのタイミングに自動でメールを送ったり、営業担当者に通知を飛ばし架電に繋げるWeb来訪通知機能といった、商談獲得を促進する機能を提供しています。

また最近では、商談獲得から商談までに発生する業務の効率化を支援する日程調整機能の実装も行いました。

ーーー特にどのような点がMAとの比較検討の際に評価されているのでしょうか

使いやすさやサポートの手厚さで評価いただいています。

MAツールは自由度が高すぎる分、どう使うかを自分たちで考える必要がありますが、Bridgeプランは、ある程度「このように使ってね」と決まった機能を提供しているため、スコアリング一つにしても迷わず使える使い勝手の良さがあります。

また、外資系のMAツールも多く十分なサポートが受けられないことで、運用に手間取ってしまう方も多かったため、手厚いサポートも大きな決め手となっています。

お客様の目的に合わせた運用提案はもちろん、導入後6か月間は定着に向けて、定期的にオンラインミーティングを実施しています。

このように、「単純に配信を行いたい方」「成果を出したい方」「より高度に運用したい方」とお客様のニーズでサービスやプランを切り分けて提供することで、多くのお客様にご利用いただき、業績が順調に推移しています。

市場やニーズの変化から戦略を磨き成長を続ける

ーーーこうした成長戦略を取ってきた中で、10月23日に名称を変更したのにはどのような背景があるのでしょうか 

これまでお話したとおり、当初は「メールの一斉配信」ができるサービスとして提供していました。

その中で、変わりゆく市場や顧客のニーズに応え、数多くあるメール配信サービスの中でも選ばれるサービスであるために、成果(商談・購入)を出すために必要なマーケティング機能を強化してきました。

結果、従来のメール一斉配信サービスの枠を超えた価値を提供するメールマーケティングサービスへと変化しました。

こうした背景があり、「配配メール」から「楽楽メールマーケティング」へと名称を変更いたしました。

ーーー楽楽メールマーケティングの今後の展望について教えてください

今後はメールマーケティングに必要な機能だけでなく、その機能を使って継続的に成果を出すための運用支援など、「成果創出の仕組み」そのものを提供していきたいと考えています。楽楽メールマーケティングを検討・利用される方の中には、「どのようなメールを送ったらいいかわからない」「どう改善していけばよいのかわからない」といったお悩みを抱える方が多くいらっしゃいます。

そのため、私たちが蓄積したノウハウをもとにメールを作成したり、私たちがお客様と継続的に伴走して運用の支援をしたりすることで、マーケティングのプロフェッショナルがいない中小企業様でも成果を出せる仕組みをサービスとして提供していきます。

また、生成AI技術を活用した機能も取り入れて、これまで以上に成果を出すための仕組みを強化していくことも検討しております。

ーーー顧客の声を聞き自分たち自身でサービスを使うことが競争力の源泉になっていると感じましたが、これは部門全体の文化なのでしょうか?

「顧客の声を聞く」という点は、企画・営業・CSそれぞれの部門が意識しています。

お客様の業務支援となるサービスを提供することが重要であり、お客様が必要と感じている部分に対して、手の届くような機能を開発することが最も大切だと考えております。

そのため、「お客様の声をちゃんと聞きに行きなさい」と常々言われており、実際に私たちもお客様にインタビューする機会を定期的に設け、そこで得られた声を事業部全体で共有しています。

ーーー会社全体の文化として浸透し徹底されていることが理解できました。本日は非常に興味深いお話、ありがとうございました。

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累計導入社数10,000社超!メールマーケティングサービス「楽楽メールマーケティング」

ラクスが開発・販売する「楽楽メールマーケティング」は、累計導入社数10,000社以上の導入実績から得た実践的ノウハウを詰め込んだメールマーケティングに必要な機能を搭載したメールマーケティングサービスです。

マーケティングの専門知識がなくても、直感的な操作でセグメント配信やステップメールなどの高度な機能を誰でも簡単に使いこなせます。さらに、配信案の提案や添削といった成果を出すための“運用”を共に構築する継続的なサポートで、費用対効果に優れた効果的なメールマーケティングを支援します。

■サービス詳細はこちら

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