ノンデスクワーカー版ビズリーチ『Zキャリア』が、2年で2倍に急成長できた理由【ROXX】

ビズリーチが切り開いたハイクラス層のダイレクトリクルーティング/転職市場は大きく拡大し、ビズリーチは単体で純利益100億規模まで成長。

一方でノンデスクワーカー領域は人手不足が叫ばれながらも、様々な要因でビッグプレイヤーが存在しない空白市場となっていました。そこにいち早く参入し直近2年で2倍成長し、売上45億円という規模まで拡大を遂げているのが『Zキャリア』を運営するROXXです。

本日はノンデスクワーカー領域で人材紹介/ダイレクトリクルーティングが成り立ち辛かった構造的な要因を紐解きつつ、なぜROXXはそこで急成長を遂げているのか、参入障壁はどこにあるのかを考察していきます。

 ROXXは2013年、当時青山学院大学在学中であった中嶋汰朗氏が創業。同氏はバンドでのメジャーデビューを目指すも別の道を考え始めていた時期に、たまたま受講していた起業についての講義がきっかけで同社を創業。

講義に登壇していたKDDI・イーアクセスの創業者からエンジェル出資を受け、当初は青学生の人材紹介から事業をスタートすると、個人が“副業エージェント”として人材紹介が行える『SCOUTER』、人材紹介会社向け求人DBの『agent bank』等複数回のピボットを重ねます。

その後『agent bank』のサービスを拡大する形で、現在の主力サービスであるノンデスクワーカー向け転職PFの『Zキャリア』、リファレンスチェックサービスの『back check』を立ち上げ、24年にIPOを果たしています。

最新FY25/9通期の売上高はYoY+29.8%の45.1億円で、その86％を前述の『Zキャリア』が占め、残りが『back check』の売上となっています。営業利益率は徐々に改善しているものの、いまだにFY25/9は▲15.9%赤字となっており、来季での黒字化を目指している状況です。

収益源は大きく3つに分かれており、中でもZキャリア経由での転職時に求人企業から発生する、パフォーマンス収入が半分以上を占め、成長率も最新四半期ベースでYoY+33.9%と最も高くなっています。

そして、back check事業はエン・ジャパンに約20億円で事業譲渡されることが報じられており、来期以降はZキャリアの単一事業となります。

このように同社の売上ドライバーとなり高成長な『Zキャリア』ですが、これまで大きなプレイヤーが存在しなかった背景や、ハイクラス向けのビズリーチとの違いはどのような点にあるのでしょうか？

ノンデスクワーカーの就業人数は従来のプラットフォームがターゲットにしていたホワイトカラーと比較しても4倍以上と母数が多く、ダイレクトリクルーティング市場は7,700億円という巨大市場となっています。

しかし、人材紹介は紹介者の年収の30％〜程度が求人企業→エージェント側に支払われるモデルである都合上、Zキャリアがターゲットにする年収〜400万円の領域では、よほど効率的なOpsを取らない限り収支を成立させるのが難しくなります。

そのため、キャリアアドバイザー100人〜等の大規模な事業者や、ダイレクトリクルーティングのプラットフォームはこれまで存在しておらず、人を介さない求人広告やハローワーク等の公的なサービスが、転職の受け皿となってきました。