韓国のAmazon『Coupang』の競争戦略とAlibaba/TEMUの衝撃
韓国のAmazonと言われるEC企業『Coupang』。韓国で9割以上の世帯が利用するシェアNo.1のサービスで、23年の売上高は243億ドルで悲願の黒字化も達成。
SoftBank Vision FundやSequoia等のTop TierのVCから投資を受け、韓国初のユニコーンに。21年に米NASDAQに840億ドルで上場。アジア企業としてはAlibaba以来の超大型上場です。
事業は韓国でのEC事業のほぼ一本足ですが、24年8月9日現在の評価額も409億ドルと、人口と経済規模で上回る楽天やLINEヤフーといった、日本のプラットフォーマーよりも高い評価額が付いています。
本日はそんなCoupangのAmazonを徹底的に研究したビジネスモデルと、10億ドル規模の投資で韓国市場に攻勢をかける、Alibabaとの競争について考察していきます。
Amazon + Instacart + DoorDash = Coupang
Coupangはハーバードビジネススクールを中退したキム・ボム氏が2010年に創業。当初は共同購入ECの『Groupon』のクローンから事業をスタートさせますが、収益化が難しかったことで見切りをつけ、Amazonのような直販モデルにピボット。
本家Amazonと同じく、家庭用品やインテリアからスポーツ用品まで1億点以上の幅広い品揃えを取り揃えているほか、会員メンバーシップのRocket WOWや生鮮ECのRoket Flesh、食品デリバリーのCoupang Eatsまで幅広くサービスを展開。
AmazonとInstacart、DoorDashの3社を足し合わせたようなビジネスモデルといえますが、送料無料や動画サイトのCoupang play無料視聴などの特典が受けられるWOW Membersは、Amazon Primeに非常に酷似しており、同社を徹底的にベンチマークしていることが垣間見えます。

Coupangの最大の特徴は自社直販商品を対象とした、最短五時間の即日配達サービスのRoket Deliveryです。これにより、前日0時までに翌日の朝食のついでに日用品を注文しておくと翌朝には玄関に届いている、という素晴らしいユーザー体験が可能になっています。
このような豊富な取扱商品と圧倒的な配達スピードにより実現される顧客体験が支持され、ユーザーの定着率が極めて高くなっています。
以下は上場時のform S-1で公開されている獲得年別の新規ユーザーの購入金額の成長率です。2016年の新規ユーザーの購入額は、初年度を基準に2年目に1.37倍、5年目には3.59倍と購入金額が伸び続けていることが分かります。
獲得年が直近であればあるほど購入金額の成長率も高くなっており、年々顧客体験の磨き込みが続いた結果、ユーザーの利便性も引き上がっていると推測されます。23年4Qの資料で2018年の獲得ユーザーの購入金額はYear6以降も伸び続けていることが確認されています。

form S-1

24年4Q Presentation
ユーザーの離脱が激しい or 継続ユーザーの購入金額が成長しないECは穴の空いたバケツのようなもので、常に新規の獲得を強いられることになります。逆にユーザーの離脱を購入金額が上回るネガティブチャーンという状態になると、一気にECの成長率は高まります。
これを達成しているのがECのエクセレントカンパニーであるモノタロウです。Coupangは獲得年別のGMVの積み上がりは公開していませんが、毎年継続ユーザーのGMVの占める割合が上がり続けており、一定程度積み上がっていることが推察されます。

form S-1
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