SaaSのOEM工場『Arent』。収益性・成長性を両立する秀逸な受託モデル
Arentは通常のSaaS企業と異なり自社プロダクトの販売ではなく、SaaSの開発を受託することで収益を上げる企業です。
開発後のGTMでは顧客企業とJVも設立し自らリスクを取るところまで踏み込む手法をとっており、ピュアなSaaSともSIerともコンサルとも異なるユニークなモデルです。
SIerのようなピュアな受託開発はSaaS等のパッケージベンダーと比較してマージンが低くなりやすく、最大手のNTTデータでも粗利率は27.3%、業界トップレベルのシンプレクスでも42.8%となっています。
ところがArentは粗利率は57.9%とSIerとは隔絶した粗利率を実現しつつ、営業利益率でも42%とSaaS企業と比較しても極めて高いマージンを実現しています。(東証に上場する時価総額300億円以下の企業内で23年7月〜9月期の営業利益率で第六位)
直近2年で売上も2.9xと成長率も高いことから、市場の評価も極めて高くPERは38.0xとなっています。
本日はこの成長性とマージンを両立したArentのユニークなビジネスモデルについて考察していきます。

事業計画及び成⻑可能性に関する事項
建設業界に特化してデジタル事業の立ち上げを支援
同社の前進はMU投資顧問(現:三菱UFJ不動産投資顧問)のファンドマネージャー、グリーのエンジニア出身の鴨林氏が創業した、コンサル会社アストロテック社です。
同社の現在のメイン顧客の一社である千代田化工建設のコンサル案件を、大学の同級生佐海氏がCEOを務めCADに強みを持つ開発会社CFlatと共同で実施。
ここでアストロテック社のコンサルのノウハウとCFlatの業界知見にシナジーを感じ、19年に合併してArentに社名変更。23年にIPOを果たしています。
事業セグメントは3つに分かれており、現在の主力は建設業界に特化してデジタル事業の立ち上げを支援する『プロダクト共創開発』で、この事業が売上の92.0%を占めます。
その他は顧客とのJVで販売を行う『共創プロダクト販売』が7.2%、『自社プロダクト』が0.8%と、現在のメインビジネスはピュアなSaaS事業ではなく受託ビジネスとなっています。
主力の共創開発事業では、3ヶ月間のPoC後24ヶ月程度で最低限の機能を備えたMVPを作成する本開発フェーズに入り、その後は追加開発を行う継続案件フェーズに入ります。(MVPの作成にしては大分開発期間が長いのでかなりリッチに作ってそう)
継続開発でも年間50百万円~数億円規模の収益が発生しており、社内利用と外販がクローズするまでは案件が走り続けるため、フェーズが後ろに進めば進むほどシステムが大規模化し収益が安定するビジネスモデルと言えます。

事業計画及び成⻑可能性に関する事項
同社がDXのモデルケースにするのが航空機メーカーのダッソーで、ダッソーは自社開発のCADの外販事業をスピンアウトさせた子会社の時価総額が、本体の3倍にもなっています。
このように業務効率化に留まらずデジタル投資が収益にも大きく貢献できるよう、千代田化工建設の案件ではJVを設立し、開発したSaaSを新規事業として外販するに至っています。
SaaSは立ち上がってくるとリカーリング性と利益率の高い非常に魅力的な事業になりますが、先行投資が必要であり、特にVertical SaaSはHorizontalと比べて立ち上げ難易度が高めです。
Arentは通常必要になる先行投資を、擬似的にクライアントからの受託費用でカバーしていくようなモデルとなっており、販売でも大きな売上が作れれば、非常に効率の良いビジネスモデルになり得ます。

事業計画及び成⻑可能性に関する事項
受託ビジネスで高い利益率と成長性を両立できる理由
続いてこのような受託開発に近しい業態でなぜSIerのベンチマークを大きく上回る利益率と、2年で2.9xという非連続な成長が実現できるのか考察していきます。
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績


