Vertical SaaSの大本命『Finatext』は何故、SIerの本丸『基幹システム』を受注できるのか?

遂に黒字化したVertical SaaSの大本命『Finatext』のビジネスモデルについて考察
もやし 2024.05.20
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SaaS企業の成長が叫ばれて久しいですが、国内のSaaS企業のARRランキングで上位を占めるのは、マネーフォワードやfreeeを中心にSMBを主要顧客とする企業であり、大企業のシステム開発を担うのはいまだにSIerです。

そんな中、MUFGや東京海上等の日本を代表するメガバンク・メガ損保の基幹システムを受注し、急成長するのがドイツ銀行出身の林氏率いる『Finatext』です。

スタートアップが入り込むのが最も難しいであろう領域でなぜ、このような顧客獲得や高成長を実現できているのでしょうか?

今回はそんなFinatextの事業の優位性や、今後の成長性、利益率が継続的に高まるビジネスモデルについて、考察していきます。

金融インフラ事業が会社全体の成長を牽引

Finatextは2013年創業のFintechスタートアップです。

直近23年度の通期業績はYoY+41%の53.8億円で営業利益黒字化を達成。3期連続の40%成長を果たしており2年で売上が約2倍、来期に至っては23年以上のYoY+42%成長で76.3億円を計画と、直近急成長しています。

その事業領域は、金融エンプラ向けにフロントエンドのアプリケーションを提供する『フィンテックソリューション』、機関投資家や公的機関向けの『ビックデータ解析』、金融機関向けに資産運用・保険の基幹システムを提供する『金融インフラストラクチャ』の3つです。

中でも売上の55.0%の過半を占めるのが3つ目の金融インフラ事業で、成長率もYoY+67%と最も高くなっています。一方利益ベースでは、金融インフラのセグメント利益が▲1.0億円、ビックデータ解析が2.5億円、フィンテックソリューションが0.6億円となっています。

つまり他の事業で稼いだ利益を、ハイポテンシャルで成長率の高い金融インフラに再投資することで、前述のような高い成長率を実現していると考えられます。

2023年度通期決算説明資料

2023年度通期決算説明資料

金融インフラ事業は2018年に新規事業としてスタートしていますが、既に三菱UFJ銀行、東京海上、セブン銀行、ニッセイAM等日本を代表する金融機関を中心に、22社の顧客を獲得。

SaaSスタートアップがエンプラへの入り込みに苦戦しているのは前述のとおりですが、中でも金融業界はインフラ的側面が強くシステムにも高い品質が求めらる領域です。その基幹システムは業務のコア中のコアでありシステム障害を起こすと即重大インシデントになる、最も入り込みの難しい領域の一つであると考えられます。

同社はなぜ短期間に日本を代表する金融エンプラに基幹システムの導入に成功し、高い成長率を実現できているのでしょうか?

2023年度通期決算説明資料

2023年度通期決算説明資料

圧倒的なコスト・期間の圧縮と強固な参入障壁

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