a16z『ネットワーク効果』で読み解くマッチングアプリ各社のグロース戦略
Bain CapitalやTinder運営会社のMatch Groupを担い手として再編が進む国内マッチングアプリ市場。
ネットワークの規模の拡大がユーザーの利便性に直結し、更なるネットワークの拡大・品質向上に繋がるという点で、典型的なネットワーク効果の働くプロダクトであると言えます。
本日はa16zパートナーのAndrew Chen氏の著書『ネットワーク効果』で解説されているフレームワークをもとに、マッチングアプリのグロース構造について読み解きつつ、再編が進む国内市場の競争について考察していきます。
極めて難しいマッチングアプリのネットワーク構築
ネットワーク効果とは
まずはネットワーク効果の概念について簡単に触れておきます。その最もシンプルな定義は『多くの人が使えば使うほど製品の価値が高まる』、ことであると言えます。
メルカリの例を考えてみると、商品を出品する売り手が増えると商品数が拡大し、買い手の利便性が向上し、ユーザー数が拡大。買い手の増加が売り手の在庫回転率・売上向上にも繋がり、さらに多くの売り手を惹きつけることになります。
このネットワーク効果が参入障壁となり、メルカリは国内フリマ市場でシェア77.7%を保有するに至っています。
しかし、ここで注意が必要なのは、ネットワーク効果はマイナスにも働きうる点です。初期のMarket Placeは買い手がいないため出品を行う売り手が存在せず、売り場に入ったユーザーは商品が並んでいないためCVに至らず、離脱してしまうでしょう。
各製品/プロダクトにはそこを超えるとネットワークが拡大していく閾値が存在しており、ネガティブにネットワーク効果が働いている状態で、如何に閾値を越えるか?というのが、ネットワーク製品の事業立ち上げ上の論点となります。(いわゆる鶏卵問題ですね)
マッチングアプリが抱える難しさ
本日の主題であるマッチングアプリに話を戻すと、そのビジネス構造は出会いを求めるユーザーのネットワークを構築し、そのマッチングに対しユーザーから収益を獲得するというシンプルなものです。
出品者を集める必要があるMarket Place等よりもよほどネットワークの構築が簡単なように思えますが、3つの観点から非常に難易度が高いと言えます。(全てのネットワーク製品につきまとう鶏卵問題は前提として)
一つ目はそのネットワーク構造が地域性を抱えていることです。マッチングアプリの基本的な体験は、①希望の条件でユーザーを探す→②マッチングが起こりメッセージが交わされる→③直接出会う→④関係が深まる、というものです。
同じ日本に住んでいたとしてもある程度の距離の近さがないと、ユーザーが達成したい③④に進むことができず、ユーザーが定着しません。(東京のユーザーが多くても京都や大阪、福岡のユーザーの利便性は良くならない)
そのため、関西・関東の各都市圏や県といった地域単位でユーザーのネットワークを個別に構築していくことが必要であり、アプリのユーザー数を拡大していくためには、複数の地域で同時にそれを行う必要があります。
二つ目の難しさは男女間のマッチング数に偏りが生まれ安く、それが双方のユーザー体験の悪さに繋がることです。
一般的にマッチングアプリが解消するデーティングの需要は男性の方が高いため、男性ユーザーの方が多くなりやすい構造にあります。さらに男性ユーザーは50%程度の女性ユーザーに対しマッチングしても良いと感じるのに対し、女性の同じ指標は5%程度に下がります。
その結果、女性側には捌ききれない大量のメッセージが届き、取捨選択が困難になることで女性ユーザーの体験が悪化。逆に男性側はメッセージを送っても返信が来ることがないので、別の理由で体験が悪くなります。
マッチングアプリの運営者は女性側のユーザー獲得に注力して男女間のバランスをとりつつ、ネットワークのマッチング品質を、高める必要があります。
最後の三つ目はマッチングの精度が高まった結果ユーザーが離脱する構造にある点です。
マッチングの結果交際等がスタートすると多くのユーザーはアプリを退会・離脱をしてしまいます。ネットワークの品質を担保しているのは、女性や男性の一部の人気ユーザーであるため、これらのユーザーの獲得がマッチングアプリのグロースの鍵です。
しかし彼・彼女らには大量のユーザーのアプローチが集中し、結果的に多数のマッチングが起こった結果、早期に目的が達成され離脱する構造にあります。
この辺りは毎年ユーザーが入れ替わる就職サービスとやや似ていますが、ユーザーのLTVには天井が作られてしまいます。(カジュアルな出会いを求める一部のユーザーはその限りではない)
国内TOP事業者のPairsやグローバルトップのTinderの、初期の鶏卵問題解決に向けたグロース戦略を見ていきましょう。
同質性の高いユーザーへの集中的な資本投下が立ち上げの鍵
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績


