世界シェア50%。医療の巨人エムスリーの勝ちパターンとM&A戦略

医療の巨人エムスリーのドル箱事業とがグローバルで水平展開する勝ちパターンとについて考察
もやし 2024.05.03
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毎度お馴染みのこの書き出しですが、エムスリーについてはもはや説明不要かもしれません。

医療ドメイン単体で、楽天やラインヤフーを凌ぐ時価総額5兆円まで到達し、グローバルでも50%という高い医師カバー率を誇る、医療ITの巨人です。

今回はそんなエムスリーが、医療プラットフォームで高いシェアを築くに至った経緯や、それを起点とした事業の拡張、同社の特徴的なM&A戦略等について考察していきます。

製薬会社のマーケティング支援を中心とした事業ポートフォリオ

エムスリーは様々な医療領域の事業を展開する日本発・世界屈指のITコングロマリットです。

同社の医療従事者専門サイトでは、国内90%、全世界の50%以上にあたるグローバル650万人の医師会員を保有しています。これを起点に製薬会社のマーケティング支援から事業をスタートさせ、治験のマッチング、キャリア支援、病院の経営支援、海外と大きく5つの領域で事業を展開しています。

23年度の売上収益は2,388億円、営業利益率26.9%と、同領域のメドピアの7.6%、メドレーの12.9%と比較しても、圧倒的に利益率が高くなっています。

主力は製薬会社のマーケティング支援を行うメディカルプラットフォーム事業で、全社売上の39.1%の934億円という巨大ビジネスです。

その他のセグメントも病院の経営支援を行うサイトソリューション352億円、海外698億円と、かなりのサイズであることが分かります。

全ての事業が看板を張れるレベルですが、特に売上934億円で利益率41.3%という、規模・利益率共に飛び抜けた、メディカルプラットフォーム事業が目につきます。

2024年3月期決算発表資料

2024年3月期決算発表資料

原点にして頂点。製薬会社のマーケ支援で売上930億円・利益率40%超えの理由

このメディカルプラットフォーム事業は、同社の医療従事者専門サイト『m3.com』上に、医薬品の情報を掲載し、製薬会社のマーケティング支援を行うサービスです。

利益率40%超えというのは中々お目にかかれないレベルですが、なぜこのような素晴らしい事業を築くことができたのでしょうか。大きく3つに分けてその理由を考察していきます。

①製薬会社のマーケティング予算の大きさと非効率の存在
②医師に特化したコンテンツと地上戦・空中戦による国内シェア9割の会員基盤
③製薬企業のマーケティングに深く入り込み5億円〜10億円の単価を実現

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