売上400億円弱で25%成長・利益率の改善を両立するラクスル事業が、改めて強すぎる件
国内スタートアップシーンで大きな存在感を放つラクスル社。創業者松本氏の新規事業『ジョーシス』立ち上げと100億超の資金調達や、連続的な事業の立ち上げが大きな注目を集めていますが、祖業のラクスル事業が今だに事業規模・成長率共に頭二つ抜けており、絶好調です。
本日はラクスル事業にフォーカスして、単なる仲介に留まらず需給両側に深く食い込むビジネスモデル、利益率の改善を伴った成長、型化された同社のPMI、について考察していきます。
原点にして頂点。安定成長する祖業のラクスル事業
ラクスルは複数業界でBtoBの受発注プラットフォームを提供する企業です。印刷ECのラクスルから始まり、物流版Uberのハコベル、TVCMのノバセル、コーポレートITのジョーシスと様々な業界に事業を広げています。
これらの事業領域にはシナジーを見出しづらく、一見無作為に領域を広げているように見えますが、需給ギャップが大きい、多重下請け構造で取引コストが高い、市場規模が大きい等の、一定の共通点を見出すことができます。
売上高の推移をみると、21年期は前述のハコベルやノバセルの新規領域が徐々に伸び、ラクスルの比率が減少傾向でした。しかし、22年にハコベルを物流商社のセイノーとのJV化し連結から除外。TV CMのノバセルも売上のボラティリティがやや高くなっています。
しかし祖業のラクスル事業は、直近まで一貫して成長しており、全社売上の91.4%を占める四半期116億円というサイズながら、年率25.2%という高成長で、同時に粗利率も改善しています。
様々な事業が立ち上がりつつも、印刷いう比較的地味な領域の『ラクスル』事業の成長が、全社のトップライングロースを牽引していることが分かります。
2024年7月期第2四半期決算説明会資料
需給両側に深く食い込むことで粗利率がTake Rateが継続的に改善
続いてはそんな絶好調なラクスルのビジネスモデルについて考察していきます。
印刷市場は大日本印刷と凸版印刷の2社が50%以上のシェアを抑える寡占市場で、上位企業が自社の生産設備で受けられるない受注を、手数料を抜きつつ下請けに流すことを繰り返す、多重下請け構造になっています。
これにより、バイイングパワーのない中小企業はサービスに取引コストの乗った高い価格を支払い、下請け事業者は稼働率を上げるために殆ど儲からない案件を受けざるを得ない、という業界の負が発生しています。
ラクスルは印刷会社のネットワークを作ることでこの多重下請け構造を解消し、需給両側への提供価値を増やすモデルです。
成長可能性に関する説明資料(2018年)
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