楽天モバイルのAWS。グローバル売上600億円のもう一つのモバイル事業

楽天の通信通信プラットフォーム事業のビジネスモデルと競争優位性を考察
もやし 2024.09.07
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700万契約を超え遂に黒字化が見えてきた楽天モバイル。モバイル事業のEBITDAベースの損益分岐点は800万〜1,000万契約と言われており、現状のペースで伸びれば今年度中に達成するものとみられています。

そしてモバイル関連の事業で大きなポテンシャルが存在するのが、楽天がモバイル事業の運営で培った通信技術をプラットフォームとして提供する、『楽天シンフォニー』事業です。ドイツ、韓国、エジプト、米国といった世界各国の通信キャリアへのサービス提供が報じられており、2023年の売上高は600億円規模と、かなりの巨大ビジネスになっています。

本日は、そんな楽天のシンフォニー事業の以下のポイントについて考察していきます。

  • 楽天シンフォニーのビジネスモデル

  • 通信インフラ市場の課題とトレンド

  • 楽天シンフォニーが世界の競合を押しのけて弩級の案件を獲得できる競争優位性

  • 市場の水平分業型への移行と楽天の戦略

ドイツ第4のキャリアに完全導入。グローバル受注残高は4,000億円越え

この楽天シンフォニー事業は、Amazonが自社のEC事業のために構築したクラウド基盤を他社にも外販するAWSと立ち位置が非常に似ています。

toCのモバイル事業で培ったモバイルの運営基盤を外部に解放するビジネスで、通信キャリアの事業に必要なインフラの構築から運用までを一気通貫で提供します。

2023年現在、グローバルで19の顧客を既に抱えており年間売上3.9億ドル(当時レートで約590億円)、受注残高まで含めると4,500億円となっています。

楽天グループ会社紹介資料(2024年5月)

楽天グループ会社紹介資料(2024年5月)

シンフォニー事業の中で、特に象徴的な案件がドイツの通信キャリアの1&1の案件です。1&1はドイツ版の楽天モバイルのような事業者で、元々自社でインフラを抱えないMVNOとして事業を展開しながら、2023年に第四のMNOキャリアとしてドイツ市場に参入。

楽天は同社のこの参入にあたり、インフラのインテグレーションから運用・保守までフルパッケージで受注しており、受注金額は2,800億円規模とみられる弩級の案件です。

楽天の現在の主力事業はモバイル事業にとどまらず、インターネット、Fintech等も含め全て国内が主戦場となっていますが、シンフォニー事業は世界各国の通信事業者が顧客になりうる、グローバル数百億ドルの市場です。

英語化を進め、グローバルで成功するという三木谷さんの悲願の達成にも繋がる非常にハイポテンシャルな事業と言えますが、楽天の優位性はどこにあるのでしょうか?

ベンダーロックインでBig3が支配する寡占市場

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