ファンド傘下で病院20件を連続買収し上場。日本最大の動物病院グループの組織的経営
病院は株式会社による運営が禁止され買収も行うことができませんが、動物病院はその規制の対象外です。国内外で巨大病院グループやファンドを軸とした再編が進み、企業価値1兆円を超えるようなプレイヤーも誕生しています。
本日は国内外で進むファンドによる再編の背景と、J-STAR傘下で日本最大の動物病院グループである『WOLVES HAND』のビジネスモデル、M&Aによる成長戦略を更新していきます。
世界中で進む動物病院の買収。国内のメインプレイヤーはPEファンド
直近newmoやGENDAといった新興企業による、成熟産業の連続買収が多いに話題になり、連続的な買収を根幹に据えたロールアップ戦略が、注目されています。その波は動物医療業界にも及んでおり、国内外で様々な事例が登場しています。
例えば米VCA社は米国とカナダで買収を重ね1,700院以上の動物病院を傘下に収め、欧米最大級の動物病院チェーンに成長。2017年に91億ドルの価格で、世界第一のペットフードメーカーであるMarsに買収されています。
中国では大手病院グループ4社が合併し新瑞鵬寵物医療集団(New Ruipeng Pet Healthcare Group)が誕生。約1,400の動物病院を抱える同社は、20年に300億元(約4,500億円)のバリュエーションでテンセント等から数億ドル規模を調達。
そして密かに国内でもファンドを担い手とした業界再編が進んでおり、Lキャタルトン、YCP、JーSTAR等のファンド/自己勘定投資会社、やスタートアップのPECO、前述のVCA等が積極的に買収を進めています。
その中でも特に大胆に買収を進め、直近遂に上場を果たしたのがJ-STAR傘下の『WOLVES HAND』です。23年の売上高は46億円で営業利益率は17.27%と、同業で上場する日本動物高度医療センターの11%を規模・収益性共に上回っています。
その前身は2000年に開業された『きたい動物病院』で、2019年にJ-STARの出資を受ける形で『WOLVES HAND』が設立されます。瞬く間に20拠点以上を買収により獲得し、設立4年で売上が46億円と恐ろしいスピードで成長し、上場を果たしています。
続いて、直近ファンド等による業界再編が進んでいく背景や、同社のビジネスモデルについて考察していきます。
事業計画及び成長可能性に関する事項
小規模病院を圧倒する、スケールを活かした”組織的動物病院経営”
まずは、外部環境について簡単に整理していきます。