エンプラ向けソフトウェアの隠れた独占企業。シェア43.9%『アバント』の競争力の源泉を探る

連結会計ソフトシェア43.9%のアバントのビジネスモデルとクロスセル戦略について考察
もやし 2024.12.27
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投資余力が大きく単価を伸ばしやすいエンタープライズ企業への入り込みは、SaaS企業においてARRを継続的に伸ばしていくために、非常に重要な活動であると言えます。

一方で、エンタープライズから求められる機能や品質、カスタマイズ要求の水準は非常に高く、SMBほどスタートアップの入り込みが進んでいないのが現状です。

本エントリのテーマである『アバント』は、トヨタやNTTをはじめとした日本の時価総額トップクラスの超エンタープライズ顧客を多数保有。

連結会計システムで市場シェア43.1%という極めて高いシェアを抑えています。本エントリでは、同社のビジネスモデルやシェアを獲得できている要因、今後の成長戦略について考察していきます。

株式会社アバントグループ  2024年6月期 決算説明資料

株式会社アバントグループ  2024年6月期 決算説明資料

高いシェアを持つ連結決算事業を基盤に14期連続増収

同社は1997年にPwC出身の森川氏が創業。主力は連結会計システム『Diva』で、連結会計制度の導入や四半期開示の義務化等の、ディスクロージャー規制強化の波に乗り成長してきました。

事業セグメントは、①連結会計ソフトの開発・販売と決算アウトソーシングを行う『連結決算開示事業』、②データ基盤やBIツールに特化してコンサル/システム開発を行う『DX推進事業』、③経営管理領域のソフトウェア+コンサルティングを行う『経営管理ソリューション事業』、の3つで構成。

①は経理部門、②はシステム部門、③は経営企画/経営者層とセグメント毎に顧客部門が異なるものの、経営情報のデジタル化や意思決定支援をソフトウェアの力で実現している企業であると言えます。

24年の売上高はYoY+14%の244億円となっており、概ね3つのセグメントが3割前後ずつ売上シェアを保有。成長率ではYoY+21.7%で成長するDX推進事業が、トップライン成長を牽引する形となっています。

マージンにも目を向けると粗利率46.9%、営業利益率16.8%とSIer比では全社の利益率自体も高水準ですが、中でも連結決算開示事業の利益率は25.6%と飛び抜けて高くなっており、収益化後のSaaSと同等の水準になっています。

売上高は14期連続、営業利益も9期連続の増収増益と安定した事業成長を実現できていますが、強固な顧客基盤とストック売上高比率の高い連結決算事業が基盤となることで、それが実現されていると考えられます。

株式会社アバントグループ  2024年6月期 決算説明資料

株式会社アバントグループ 2024年6月期 決算説明資料

連結決算ソフトウェア+BPOを超エンプラに絞って提供

続いて事業成長の基盤を支える、連結決算開示事業の特徴と強みについて考察していきます。

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